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あべの古書店二代目の日々

5月23日
あっという間に半年が経過。

手元にこんな本がある。
『駿河富士』 村松梢風 サイレン社 昭和11年
デパートの古書即売会でばかばかしく安い値段で入手した。
表紙は痛みが激しいが、読むには問題はない。
「廃棄」の印が押してある。
これを収蔵していたのは「静岡縣立葵文庫」。
現在の静岡県立中央図書館の前身である。
おうだんくん(静岡県横断検索システム)を利用して、県下図書館の収蔵状況を調べてみると、『駿河富士』を蔵書している図書館は一館もない。
図書館はいかなる理由によって蔵書を廃棄するのだろうか。
自分は甚だ関心がある。

1月8日
あっという間に三ヶ月が経過。

『静岡県宣教史』には、酪農家が城内に所有していた土地をサン・モール修道女会が買い取り、その場所に学校を開校したとあった。
この話をしたところ、城内に農地があったとは聞いたことがないと識者に一笑されたので、どこか参照資料がないものかと思っていたのだが、ようやくこんな記述を見つけた。
《濱村育牛所附養豚部(舊城草深門内)

城内監獄署の北隣、草滑らかに氣清きところ、四拾餘頭の牝牛、常に悠々自適して、秋の日の長きよりも長く、其柵内に起臥するを見る、是れ、濱村育牛部なり、塲主濱村氏は、本縣下牧畜熱心家の一人にして他年の鴻圖を期して、先つ當所に、この育牛部を設け、大に其繁殖を計ると共に、別に養豚部を設置し、在米州なる、實弟賢次郎氏が、常に牧畜上視察に依て得たる報告に就て、規模を欧米に形取り、非常なる奮勵と、熱心なる研究とを以て、専ら事に身を委ねつヽあり、飼養の良牛には、短角種セトシ種等、其他二三種とす、牛の乳の販賣は、其飼料の幾分を補わんが爲にして、日々搾取するもの、平均三斗五升を下ることなく、市中に販賣され、徳川公、縣知事、監獄署、静岡病院、各開業醫、等何れも之が花客たり、因に曰く豆州江間村には、濱村氏が本牧塲あり、九拾餘頭の育牛ありといふ。

 由比育牛塲(舊城四ツ足門内)

塲主は平野房次郎氏なり、明拾十二年創立以來、短角牛其他二三種の育牛を飼養し、牛乳を搾取するもの拾餘頭、而して毎日三斗内外の牛乳は全市顧客の需用に充つ。

 この他市内の牛乳店には東草深の
  藤波牛乳店、 三番町の田中牛乳店、
  大工町の青野牛乳店 等なり。》
明治26年に静岡の光風社が刊行した『静岡繁昌記』に記されていた。