ART CRITIC / CRITICAL ART #162 
グループ展
1998年2月 静岡県立美術館展示室

対談 中原大+菖蒲治

中原−これは版画ですね。

菖蒲−ああ、版画だね。

中原−版画にもいろいろありますね、木版とかリトグラフとか。

菖蒲−うん、いろいろあるね。

中原−この人の作品はどういう技法を使っているんですか?

菖蒲−知らん。何故そんな事を訊くんだ?

中原−・・・・・・。

菖蒲−ここに描かれた人物だが、どいつもこいつもデブだな。

中原−肥満体?

菖蒲−いや、肥満ではない、豊満だ。

中原−どうしてこういうキャラクターを描くんでしょうね。

菖蒲−好きなんだろうな、太っている奴が。

中原−作者の好み?

菖蒲−ああ、デブ専だ。

中原−デブ専!

菖蒲−おまけにスカトロも入っている。

中原−うへっ、マニアですね。

菖蒲−この作品を見たまえ、空からボタボタ落ちてきている物体が何に見える? 俺には排泄物にしか見えないね。

中原−え、でもほら、この人なんか口で受けている。

菖蒲−だからスカトロなんじゃないか。

中原−うーん、作者は一体どんな人なんでしょうねェ。

菖蒲−おっ、ここに作品解説があるじゃないか。

中原−なになに、わたしにとって作品は日記のようなものです、ってな事が書いてありますね。

菖蒲−そうか、日記か、それでこんな赤裸々に作家の心理が表れてしまっているんだな。

中原−心理って?

菖蒲−トロいねェきみは、デブ専でスカトロってことだよ。

中原−えー、普段からそういう事をやってるんですか、作者は?

菖蒲−知らん。おそらく本人にもその意識はないだろう。仮にだ、そうした傾向が日常生活の中で抑圧される状況にあるとする、しかし、創作がそれを解消している。

中原−はー、でもそのデブ専スカトロプレイにつきあわされるぼくたちは、たまったもんじゃありませんね。

菖蒲−他人の日記なんか覗くもんじゃないって事だよ。


Ayame−鈴木大治

▲back