平成11年度静岡県芸術祭 演劇コンクール審査評



劇団清見潟 『赤櫛』

(10月30日 清水市民文化会館 杉山雅子・作 ・演出)

 地域の劇団ならではの題材をもとに、創作上演活動をつづけてきた持ち味が、四作目にして定着してきたと言えよう。清水市域で出土した古代櫛にまつわる話としてイメージを構成し、地元にとっては非常に親しみのある作品にしていた。しかも伝統工芸の継承をまもり抜こうとする職人魂をメインテーマに据えて現代と向き合おうとした作者の姿勢は高く評価できる。ただし戯曲については、古代、現代の結びつきが弱い、戯曲としての凝縮度がほしい、予定調和的展開など座付作者の枠をのり越える精進をのぞみたい。高年齢者が多いことや、殆ど全員が初舞台という状況では舞台成果などのぞむべくもないが、スタッフの役割は重要だ。演出をはじめ美術、音響などの今後の向上を期待する。