シアター・オリンピックス観劇記 #11 Ayame−鈴木大治

私は書くことにおいて演劇活動を持続する!

─────── ハーバート・ブラウ


シンポジウム『異文化の出会いと共存の可能性』  グランシップ11F会議ホール 5月16日
Herbert Blau/Tony Harrison/喜志哲雄



 今回、ぼくは静岡県舞台芸術振興室(でいいのか?)のFさんに感謝している。もしもFさんからの誘いがなければ、ぼくはこのシンポジウムに参加しなかったかもしれない。

 最初、聴講者の顔ぶれを見て、いつものごとくぼくは憤慨した。いったい何やってンだよ、静岡の演劇人、何故ここにいないンだよ! でも今は違う。気が変わった。地域劇団(この呼称っていったい何だ?)の連中がいなくて本当に良かったと思っている(そうですよね、鈴木忠志さん。ふふふ)。何故ならば、この日この場で、ハーバート・ブラウによって、「演劇」の最重要な秘密が開示されてしまったのである。あからさまに。

 スゲエ奴だ。たまげた。とんでもない奴。ハーバート・ブラウ。本物の演劇人だ。彼の発言のひとつひとつの全てが、シアター・オリンピックスに対する、途方もない一撃をはらんだものだった。お前は演劇のシヴァ神か?

 ハーバート・ブラウ。不覚にも今までこの人物を知らなかった。バロウズとキッシンジャーが混ざってる容貌。ジジイ! でも超バイオレンス。仏陀に遭ったら仏陀を殺す男。彼の発言のひとつひとつの全てがキメ台詞である。こりゃいただきだ!

 最初から妙な雰囲気だった。このシンポジウムの「言い出しっぺ」の高橋康也が欠席。急病で来られなくなったというのだ。えー、なにそれー? ハイナー・ミュラーの呪いですか?
パネラーが一人足りない。鈴木忠志さんが参加を請われていたが辞退。ぼくの目には、鈴木忠志さんがしり込みしている「ように見えた」。たしかに最初から不穏な気配はあったのだ。  荒れたとか、剣呑とか、そういうことじゃなくて、どう言えばいいんだ。本気でさ、ユーゴの空爆やコソボの虐殺を演劇とつなげて考えてるんだよ、トニー・ハリソンもブラウも。演劇が現代のPsywarにおいて、依然として戦略たりえることを・・・。

 おい、ちょっと待てよ、そんなこと言っちゃ駄目だ、とは思わなかった、その時は。ステージがあったらダイブしたいくらいだったからね。で、今になってみると、ハーバート・ブラウはあんな風に「秘密」を教えるべきではなかったのだと。それとも会場にいた人々が「それ」を必要としていたのだろうか。

 うーん、やだなー、こういう思わせぶりな書き方。特権的な体験を自慢してるっていうか。あ、でもハーバート・ブラウ先生をスゲエって思ったの、ぼくだけってこともあるんだよな。ぼくが再度、「秘密」の解説をしたって、かえって馬鹿にされるだけかも知れない。

 ということで、ぼくはそこで見たもの(惨劇)の全容を伝えるのは止めにする。実はハーバート・ブラウが言っているのだ。サイバー・スペースが秘密を無制限にばらまいていると。




今日の御挨拶  マダムO
今日の目撃  宮城聰さん/鈴木忠志さん/ジョン・ノブスさんご夫妻

▲back